1980年代
私は、小説をあまり読むほうではありません。読むにしても、長篇よりも短篇のほうを好みます。私はそこそこ読書好きであることを自負していますが、基本的に文字を読むのは面倒なんですよね。ただ、読書にはその面倒さを上回る面白さがあるってだけの話で。 …
対談と鼎談の間にある面白い相違は、二人の時と三人の時で異なる「呼吸のリズム」によるものが大きいように感じます。こちらの『書斎のポ・ト・フ』には、同人仲間だった谷沢永一、向井敏、開高健の三人が1980年の秋に行った書評鼎談が収録されています。谷…
かつて、その確かな批評眼と明晰な文章力で、世の文筆家に恐れられた文芸評論家がいました。それが谷沢栄一と向井敏です。彼らの書評は文壇や学会の風向きなどにおもねる所が一切なく、くだらない言辞には舌鋒鋭く批判を浴びせかけ、その徹底的な容赦の無さ…