私は、小説をあまり読むほうではありません。読むにしても、長篇よりも短篇のほうを好みます。私はそこそこ読書好きであることを自負していますが、基本的に文字を読むのは面倒なんですよね。ただ、読書にはその面倒さを上回る面白さがあるってだけの話で。
そんな無精者たる私ですが、読書の面白さに目覚める前から好きだった本があります。それが「ショートショート」と呼ばれる形式の本でした。星新一をはじめ、ショートショートと名の付く書籍は片っ端から目を通していた記憶があります。子どもが活字の面白さに目覚めるきっかけとして、ショートショートが入り口になったという人も多いのではないかと思います。
内容紹介
本書は、「星新一ショートショート・コンテスト」の応募作より、1979(第一回)から1983年(第五回)まで開催された分から選出された作品が収録されています。それから、本書はどうも『ショートショート広場シリーズ』として続き物になっているようですね。私が読んだのはその第一作目ということになります。本書には、選者である星新一の作品評が収録されているのも良いですね。短くも的確なアドバイスはどれもこれも読み応えがあります。
本書に収録されているのは、およそ2万5千もの応募作品群から選び抜かれた58篇ということもあり、どれもこれもハイレベルな作品ばかりで驚きました。今となっては陳腐化したオチも無いことは無いし、ちょっと表現として危なっかしい部分も有ることには有るんですが、そんな細かいことは置いといて、有無を言わせない面白さがあることは確かです。変に肩に力がはいっていない、そんな素直な感じの面白さです。
感想
非常に完成度の高いアンソロジーでした。このクオリティを越えるとなると、それこそ星新一のショートショートぐらいじゃないかなと思います。それぐらいの魅力を持っていますね。ただし、こういうのは一夜限りのお祭り騒ぎな感じが魅力の要素として加味されているような気がします。そのため、シリーズ物として本書は続刊しているみたいなんですが、正直もうこの一冊でお腹いっぱいという感じがありますね。たしかに本書は魅力的ではあるんですが、そういう雰囲気を含有した作品であることは否めません。期待感が薄い感じがする、とでも言いましょうか……。たとえば、一人の作家の作品をまとめ上げた作品だと、こういう気持ちにさせられることってあまり無いような気がします。
ショートショートの人気の秘訣は、読後の満足感が高さのせいだと思います。話のオチが命であるためでしょうか。とにかく、ギュッと旨味が凝縮されているようなあの満足感は、他の形式ではあまり味わえませんよね。思えば、小学校の図書室にあった星新一のショートショートが、私の読書の原体験になってるかもしれません。