月の雨に独り

テーマを定めた読書ブログ。

『児童書作家の思いつき 子どもと子どもの本のためのヒント集』

 みなさんには子供の頃、憧れの職業というものはありましたか。または、大人になってから夢を目指していま頑張っている最中という人も中にはいらっしゃるかもしれませんね。私は昔、児童書作家という職業に強い憧れを持っていました。いま思えばものすごく傲慢なんですが、自分が大人になれば最低限でも作家として生活できるぐらいには成っているだろうと考えていて、そのうえで、どのような作家になりたいか、いや、なるべきかという所まで妄想していたんですよね~。というより、今でも成れるものなら成ってみたいと思ってるぐらいです。どうも、幼き日の憧憬の気持ちはそう簡単に消えたりはしないみたいで……。

 児童書というのは小学校の図書館に収蔵されている感じの本ですよね。どうして私はそうした児童書の作家に特別な感情を抱いたのか。身近な存在だから憧れを持ち易かったのか。いや、そんな単純な理由ではなかったような気がします。何と言いますか、わざわざ児童書作家を目指した人たちのその志が、ものすごく立派なものであるという風に幼心に思えたというのが本当のところです。一言で表すならリスペクト精神でしょうか。児童書というものには、絵本も含めればより分かりやすいですが、真剣な内容のものが少なくありません。私はそこに、人生で初めて、大人の「本気の感情」というものを垣間見たのだと思います。

 
内容紹介

 著者の杉山亮は、20代は保育士、30代はおもちゃ作家、40代が児童書作家、50代はそれに加えてストリーテラーと、ずっと児童世界の文化圏の中で働いてこられた人物なのだそうです。そして、私生活では二人の子どもを育て上げています。そんな経歴を持つ著者が、2019年夏頃から子ども世界についてツイートしたものをまとめ上げたのが本書になります。全部で140ものツイートが収録されていますが、加筆修正が為されているにしても、意外としっかりしたボリュームがあるように感じられます。そういえば、学校にあった児童書も、ちょうどこれくらいのボリュームだったような気がします。

 内容としては、著者の気付きや知見が共有されるので、有意義であるばかりでなく、読み物としても面白いものになっています。どこか一歩遠巻きで、それでいて穏やかな子どもに対する目線が印象的でした。それから同業者に対する親愛と尊敬があって良いですね。大人同士が仲良くやらなきゃ、子どもと接する仕事なんて出来ませんよね。教育関係を仕事に選んだ人たちはみんな立派ですよ。例外なく。本当に。大人になったから今だからこそよく分かります。

 

感想

 児童書作家に憧れていた結果なのかどうかは分かりませんが、私は「児童文化」というものをかなり特別視しています。数ある文化資本の中でも、格別に尊いものであるという風に感じられますね。たとえば「子どもたちのために!」という理念ほど崇高なものはないと考えているぐらいです。しかしそれは、なんだか「恋に恋する乙女」のような哀れな感情であるのかもしれません。まさに理想に溺れるというような感じで。そこが、この本の著者とは違うとこなのかな~と、ふと思いました。というのも、私自身、実際に子どもの相手をするのは苦手なタチなのです……。

 言い訳をさせて頂くと、私は子どもの頃から気弱な人間だったんですよ。それで小学生の頃は同い年の子から泣かされてばっかりで……。それで、どうもその当時のイヤな思い出というのが身体に残っているみたいなんですよね。だから、あの頃を思い出すような年恰好の子どもに対して嫌悪感を拭えないでいるのだと思います。でも、私と似たような境遇の子って、今でも絶対にいると思うんですよ。友達が居ないわけではないけどなんとなく孤独で、熱中するような趣味も習い事も無くて、優等生だお利口さんだとかで面倒ごとを先生から押し付けられたりして……。それで、そんな冴えない子たちに一人の人間として、私の「本気の感情」を伝えることが出来たなら……。そんなことを考えるだけで、胸が熱くなってくるというものです。