ジャンルを跨いだコラボレーションというのは良いものです。それが初めての試みであればなおさら素晴らしいものになると思います。その試みそのものに価値があるのです。完成度について論じるのは、それはまた別の尺度ということです。
さて、本書は詩と短歌で連詩を紡ぐという意欲作。その試みはどのような結果を生んだのか。そして、そのプロセスはどのようなものだったのか。
内容紹介
詩人の谷川俊太郎と歌人の岡野大嗣と木下龍也が交代で一つの作品を紡ぎます。
岡野→谷川→木下→谷川→岡野……の順で詩や短歌を書きつなぎます。
前半は今回の企画で出来上がった作品が掲載されています。36まで続く連詩です。テーマもなく始まったせいか、予想だにしない言葉の連なりが続きます。しかし、連なる詩という言葉のとおり、余韻のような、慣性のような、かすかな繋がりを持った展開を見せてくれました。通底するのは「空気」と呼ぶしかない緩やかな流れでしかなく、それは「物語」のようにはっきりしたものではありません。
後半は今回の試みを経た3人の「感想戦」です。彼らの感想を読むと、作者は読者が考えるよりもよほど深く考え抜いてその言葉を選んでいることが分かります。かと思えば、直感に委ねるところもあり、ここでこんな言葉が出してくるのかという驚きもありました。
作者の意図を聞いた後では、かなり作品の印象が変わります。しかし、この感想戦からは、3人とも遠慮と照れ隠しがところどころ見受けられました。そのせいか、あまり踏み込んだところまで話が広がらないので残念です。ここはちょっと肩透かしな感じがします。やはりプロでも、目の前で自分の作品が読まれるとなると気恥ずかしいものなのでしょうね。
感想
こうした連詩や連歌の楽しみ方として正道なのかは知りませんが、本人からの解説(弁明?)と併せて読みたくなります。一人で創る時とのテンションの違いが、目に見えてはっきりするのは面白かったです。なので、普段の著者の作風について知っていると、本書はより楽しめる内容だったと思います。それを踏まえると、谷川俊太郎はかなり社交的な性格をしてるんだな~と感じました。