創作と探求の友

「読書」と「物語の執筆」を豊かにする本を紹介するブログです。

『20代の読書が人生を決める! 一生仕事と人間関係に困らない本』

 たまに書店を覗いてみると、「10代からの○○」とか「20代からはじめる○○」という感じのタイトルの書籍をけっこう見かけます。対象年齢から外れていようが、私はこのテの本を平気で買って読みます。というのも、こうした本は、入門用としてすごく練られた内容であることが期待できるからです。

 そして本書『20代の読書が人生を決める! 一生仕事と人間関係に困らない本』は「20代の読書」がテーマになっています。こういうタイトルの本を、10代が読んで早すぎるということもないし、30代が読んで遅すぎるということもないと思います。40代でも50代でもその世代なりの発見というものがあるはずです。

 

内容紹介

 本書は主に、読書論を通じて人生論や仕事論を語るといった趣旨でした。その内容は「仕事のための読書」「仕事を成し遂げるための人生」といった価値観で占められています。たしかに、仕事第一の人生というのも、たいへん立派で格好いい人生設計だと思います。しかし、それはそれとして、やはり自分は「役に立つ読書」という考え方は好きになれません。そしてそれを前面に出してきた本書とは反りが合いませんでした。こうした考え方には学ぶべきところが多くあると頭では理解しているつもりなんですが……。

 あけすけだが喧嘩腰ではないというところに著者の良心が見えて安心して読めます。しかし、たまに右翼っぽい思想が文章から漏れ出てくるのには閉口しました。いや、日本人の若者を勇気づけてくれている、著者なりの優しさから来たものだというのは分かるんですがね……。入れ込み方が雑というか、空気が読めてないというか、不意にそういうことをブチ込まれると鼻白むと言いますか……。どこがどうとは指摘できませんが、ところどころに、そういう「困ったオッサン臭さ」が滲み出していました。

 少し前にSNS上で「おじさん構文」なるものが流行りましたが、要はアレと同じです。文面から加齢臭が漂ってきそうな感じと言いますか、オジン臭いと言いますか。そういう「臭み」のある文章です。もうちょっとなんか、良い書き方があったのではないかと思われますがね。

感想

 見開き2ページにつき1つの教訓。それが102まであるというボリューム。それぞれの教訓ごとに言いたいことがはっきりしていて、迷いや言い澱みがなく、簡潔にまとめられていて非常に読みやすかったです。著者の体験が反映されているせいか、その内容にも説得力がありました。もし気になるのなら、一度手に取って読んでみた方が良い本だと思います。

 ただし、う~ん……。肩透かしというほどではないのですが、思い描いていた内容とちょっと違ったかも……。というのも、全8章のうち、読書に主眼を置いたものは第1章ぐらいのものだったんですよね~。それ以降も、たしかに話の下敷きには読書論の存在があるのですが、あくまでも読書の効用にのみ目が向いているというか。あくまで「効用ありき」で「仕事ありきの読書論」という感じが強かったです。もっと広い視野で捉えた内容を想像していました。でも『一生仕事と人間関係に困らない本』っていう書名に則した内容にするとなると、こうなるのが自然ですかね。別に本書のどこが悪いというのではなく、ちょっと個人的には、やっぱりこういうノリは肌に合わないな~というだけの話でした。