小説を書きあげるのって、しんどいですよね。どんなにくだらないって言われても、その一作を練り上げるのにどれだけの労力がかかっているか……。なんだかんだ言っても無視されるよりかは、まだ罵倒の方が救いがあります。そこには「人を振り向かせるような何か」があったかもしれないってことですからね。見どころがあるということです。本当にへこむのは誰にも知られず読まれないこと……。そこにあるのは徒労感のみです。そんなのが続けば、誰だって小説を書くのが嫌にもなります。
そんな時は、自分で「やる気」をチャージする必要があります。創作活動においては何をおいても「やる気」が全てです。なので、そういう凹んだ時には、こういう本を読むのが良い薬になると思います。まあ、本を読むだけじゃダメ、手を動かして文章を作らなきゃダメってのは、いったん脇に置いとくとして……。
内容紹介
本書は二部構成となっています。第一部では「初心者にもできる小説の書き方」、第二部では「小説家になった後の心構え」について書かれていました。
Ⅰ部 小説家になろう
第一部では「キャラが動けばそれがストーリーになる」という手法を伝授してくれます。『七人のメインキャラ』と『五人のサブキャラ』に脳内で動いてもらう『想造』という手法です。具体的には、その『想造』のための環境を構築するやり方を教えてくれます。懸念点としては「みんなが同じ手法を使うことで作家の個性が発揮されなくなるのではないか」というのがありますが、著者によれば、作家の個性というものは、この『想造』の過程で自然と生じてくるものなのだそうです。心強いですね。
その手法は、ちょっと大掛かりというか、かなり時間と労力を割かなくてはならない方法のように感じられました。しかし、これだけ丹精込めてあげれば半端な作品は生まれ得ないだろうという説得力はありました。しかし、どうも、一人暮らしでないと厳しそうな方法ですねこれは……。だから何がどうだと言うわけではありませんが……。
Ⅱ部 億を稼ごう
第二部では「小説家になった後のふるまい方」について著者が伝授してくれます。編集者との付き合い方や、二作目に着手すべきタイミングなど、気になるけど人に訊くのは憚られるような内容も教えてくれました。単純に話として面白かったです。
しかしSNSとの付き合い方に関する記述が淡白だったのは不満点です。メリットが小さいばかりかむしろ炎上のリスクが大きい、という風な書き方で済ませていました。おそらく著者は小説家が「SNSで駄弁ること」に何かしら思うところがあるのでしょうね。しかしあまりに言及が少ない。そこが残念でした。そのところ、もっと詳しく書いてほしかったですね。無関心では居られないテーマですからね。やっぱり。特に、ネットで小説を発表してる人間にとっては。
感想
著者は本書内で「小説家は儲かる」という主張を一貫させています。それを見た時は正直「大きく出たなあ……」と醒めた感じだったんですが、読んでる内にだんだん自分も「その気」になってたりして。誰でもすぐに実践できる手法が示されていて、全体的にすごく勇気づけられる内容の本でした。本書の著者である松岡圭祐はデビュー作からいきなり大ヒットを飛ばして、売れっ子作家の仲間入りを果たしている人物です。それに少しでもあやかりたいものですねえ……。本当に……。
あとがきを書いた吉田大助によると、そのジャンルをもり立てるには「プレイヤー」の多さが重要であると、そして著者の本書における目論見は小説にとっての「プレイヤー」にあたる「書き手」を増やすことにある、とのことです。私のような何の実績もない木っ端小説家にとっては、たいへん勇気づけられる言葉です。そうですよ。小説を書いているというだけでね、小説界に寄与してるんですよ、みんなね……。うまいへたとかではなく……。