ひっくり返れば浮き世。

書評を中心とした読書ブログ。評論、小説、漫画、詩歌など、幅広く読んでいくつもりです。

評論

『人新世の絶滅学 人類・文明絶滅の思弁的空無実在論』

昨今、冗談抜きで「世も末」という空気が漂っている感じがしませんか。先の世界大戦前もこのような不吉な空気が漂っていたと聞きますが……。大戦前当時よりも明らかに知性の劣化が著しい政治家に加えて、凶悪化する兵器の存在もあり、なんだか、何度も何度も…

『薄氷の踏み方』

私は学生の頃、柔道部に所属していたことがあります。その頃の思い出には不愉快なものが多いんですが、柔道を通して得た収穫というのは確かにいくつかあることにはあるんですよ。なかでも大きいと思うのは、「身体の使い方」というものが文字通り身体で実感…

『世界の凋落を見つめて クロニクル2011-2020』

「昔はよかったなぁ……」という郷愁は、ある程度の年齢になれば、誰しもが抱くようになるものでしょう。しかし昨今の「昔はよかったなぁ……」には、もっと切迫したもの、嘆きのようなものが感じられるようになりました。正直、私としては、こういう空気にはか…

『書斎のポ・ト・フ』

対談と鼎談の間にある面白い相違は、二人の時と三人の時で異なる「呼吸のリズム」によるものが大きいように感じます。こちらの『書斎のポ・ト・フ』には、同人仲間だった谷沢永一、向井敏、開高健の三人が1980年の秋に行った書評鼎談が収録されています。谷…

『読書巷談 縦横無尽』

かつて、その確かな批評眼と明晰な文章力で、世の文筆家に恐れられた文芸評論家がいました。それが谷沢栄一と向井敏です。彼らの書評は文壇や学会の風向きなどにおもねる所が一切なく、くだらない言辞には舌鋒鋭く批判を浴びせかけ、その徹底的な容赦の無さ…